検認
1、検認とは?
① 検認とは、遺言者が死亡した後、相続人などに対し遺言の存在及び内容を知らせるとともに、遺言書が偽造や隠匿や廃棄されたりするのを防ぐために、家庭裁判所が相続人などの立ち合いの下に遺言書の内容などを確認して記録として残す手続です。
② 遺言の内容を実現するためには、事前に検認を済ませる必要があります。
具体的には、遺言の内容を実現するにあたっては、遺言書に「検認済の証明書」が付いていることが必要になります。
遺言書に「検認済の証明書」が付いていない場合、法務局において土地や建物の名義変更ができませんし、金融機関から預貯金の払い戻しなどを拒否されます。
③ 公正証書遺言の場合には、検認は不要であり、検認を行うことなく遺言の内容を実現することができます。
2、検認の手続の流れ
(1)検認の申立て
① 相続人などから検認の申立がなされると、家庭裁判所は検認期日(検認の手続を行う日)の日時を決めた上で、相続人などに「検認期日の通知(期日通知書の送付)」をします。
② 検認期日は、通常、申立日から約1か月後ぐらいに指定されます
(2)検認期日の当日
① 検認期日の当日、家庭裁判所は、相続人などの立ち合いの下に、封印されている遺言書であれば開封した上で、遺言書の内容などを確認して「記録(検認調書)」として残します。
② 検認の申立て行った者(遺言書を保管している者など)は、検認期日に必ず出席する必要がありますが、それ以外の相続人は必ずしも出席しなくてよいことになっています。
(3)検認期日の終了後
① 検認期日の終了後、家庭裁判所は「検認済の証明書」を付した上で遺言書を相続人などに返還します。
② 家庭裁判所は、検認期日に立ち会わなかった相続人などに対して「検認がなされたことの通知(検認済通知書の送付)」をします。
3、検認に関して注意すること。
(1)検認は必ず行わなければいけないこと。
① 法律上、遺言書(公正証書による遺言を除く。)の保管者又はこれを発見した相続人は、遺言者の死亡を知った後、遅滞なく遺言書を家庭裁判所に提出して、その「検認」を請求しなければならないことになっています。
② 遅滞なく家庭裁判所に検認の請求を行わなかったり、或は、検認を経ずに遺言の内容を実現した場合、「過料の制裁」が科されることがあります。
③ 法律上、封印がなされている遺言書は、相続人などの立ち合いのもと家庭裁判所でなければ開封できないことになっております。
なお、これに反して、封印のある遺言書を開封した場合、「過料の制裁」が科されることがあります。
(注)2018年7月6日の民法改正により、法務局が自筆証書遺言書を保管できる制度が設けられることになりました。
なお、法務局に自筆証書遺言書を預けた場合、家庭裁判所での「検認」が不要になります。
ただし、この制度は、2020年7月に実現することになっております。
(2)検認は、遺言の効力とは関係ないこと。
① 検認の手続は、遺言の有効・無効を判断する手続ではありません。
② 検認の手続は、遺言書という証拠を保全するための手続であり、「遺言者の死亡後、遺言書(証拠)が偽造や隠匿や廃棄をされてトラブルなどが生じること。」を防ぐことを目的とする手続です。
従って、「検認が遅滞なく済まされていないと、遺言が無効になる。」というわけではありません。
他方で、「検認を済ませたから、遺言が有効であることが確認された。」「検認済の証明書が付されてある遺言書は、裁判所が確定的に有効と判断した遺言書である。」というわけではありません。
③ 検認の手続の終了後、「検認済の証明書」が付されてある遺言書の効力を裁判で争うことができます。
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