専門家に依頼をするメリット
専門家に遺言書の作成のサポートを依頼すれば、下記のとおり、様々なメリットを得られます。
そこで、これらのメリットを具体的に説明します。
1、「有効」な遺言書を作成できるメリット
① 自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合、遺言者が単独で遺言書を作成することができることから、遺言書の内容の表現が曖昧であったり、法定の方式に違背して作成されたりして、遺言が無効と判断されるケースが少なくありません。
この点、実務上、遺言が無効となるケースの多くが、遺言者が単独で遺言書を作成した場合といえます。
(例えば、現実にあったケースですが、「Aに財産の全てを任せる。」などと遺言書に記載されていた事案において、裁判所は「Aに対する遺贈の効力は生じない。」と判断しています。)
司法書士や弁護士などの専門家に遺言書の作成のサポートを依頼すれば、このようなミスによって遺言が無効になるリスクを回避することができます。
② 遺言者の死亡後、「遺言者の意思に基づいて遺言書が作成されたのか?」などの「遺言書の有効性」が相続人間で争われた場合でも、専門家に遺言書の作成のサポートを依頼していたならば、その専門家が証人となって「遺言者の意思に基づいて遺言書が作成されたこと。」などを証明してくれます。
※ 当事務所では、依頼者の方からのご希望があれば、遺言書を作成した際の状況などを「録音」又は「ビデオ収録」して記録を残すサービスも行っております。
2、トラブルにならない遺言書を作成できるメリット
① 形式上は大きな不備がなく一応は有効な遺言書を作成できたしても、遺言書の内容が一義的に明らかに整理されていないと、「遺言書の内容の解釈」などに関して相続人間でトラブルが生じることがあります。
(なお、仮に、一応は有効な遺言書を作成できたことから、裁判所が「無効にはならない。」と最終的に判断したとしても、「法律上無効にならないこと。」と「相続人間でトラブルにならないこと。」は「次元が異なる問題」です。)
この点、実務上、遺言書の内容が一義的に明らかに整理されていないことからトラブルになったケースの多くが、遺言者が単独で遺言書を作成した場合といえます。
例えば、現実にあったケースですが、遺言書上の遺贈の目的物である土地の範囲の記載が不明確であったことからトラブルになり、裁判で決着をつけることになりました。
裁判所は、長期間に渡って審理をした上で、当事者から「生前の遺言者の言動」や「現地の状況」などが証明された結果、何とか土地の範囲を確定できたことから、遺言は無効にはならないと判断しました。
しかし、専門家に一度でも遺言書の内容を確認してもらって「土地の範囲」を一義的に明らかに記載しておけば、紛争を回避できたとおもわれますし、遺言者が亡くなった後、迅速に遺言の内容が実現されたとおもわれます。
② 専門家に遺言書の作成のサポートを依頼していた場合、専門家は、遺言者の死亡後、相続人間でトラブルが生じないようにするために、「仮に裁判になった場合、証人になって「遺言書が適切に作成されたこと。」を証言をすること。」などを各相続人に伝えます。
これにより、相続人は「遺言書の効力を争っても無駄であること。」を理解して、相続人間でのトラブルを「予防できる効果」も生じます。
3、法律的に整理されたスキのない遺言書を作成できるメリット
形式上は不備もなく、一義的に明らかに整理された有効な遺言書を作成したとしても、遺言書の内容が相続人の「遺留分(遺言などによっても奪うことができない最低限度の相続できる分)」を侵害している場合、その相続人は他の相続人などに対して「侵害された遺留分の金額」の補償を請求できることになり、遺言者の意思に反する形で財産が承継されることになります。(この請求を「遺留分減殺請求」といいます。)
また、相続人が被相続人(死亡者)から遺贈や生前に贈与を受けていた場合、原則として、その対象となった財産は相続財産の一部とみなされた上で、「相続分の前渡し(特別受益)」と判断されます。これによって、その相続人の相続できる分が減少することになり、遺言者の意思に反する形で財産が承継されることになります。
このように形式上は不備もなく、一義的に明らかに整理された有効な遺言書を作成していた場合でも、「遺留分」や「特別受益」などを考慮しながら遺言書を作成していないと、「遺留分減殺請求」などにより、遺言者の意思に反する形で財産が承継されることにもなります。
このようなリスクを回避するためには(できる限り遺言者の意思が反映された形で財産を承継させるためには)、「遺留分」や「特別受益」などを考慮して、「法律的に整理されたスキのない遺言書」を作成する必要があり、司法書士や弁護士などの専門家に遺言書の作成のサポートを依頼したほうがよいといえます。
※「遺留分」及び「遺留分減殺請求」の詳細については「遺留分」のページを参照してください。
※「特別受益」などの詳細については「特別受益」のページを参照してください。
4、遺言書を適切に管理できるメリット
遺言書を作成しても、遺言書を紛失や消失をしてしまったら、遺言の内容が実現されないことになります。
また、遺言書を適切に保管していない場合、遺言書の内容によって相続する財産が減少される相続人が、遺言書を偽造したり、隠したり、廃棄したりすることも考えられます。
さらに、遺言者の死亡時に遺言者がそのまま残存していても、遺言者が亡くなった後に遺言書が確実かつ迅速に発見されないと、遺言の内容を迅速に実現させることができません
このように遺言書を適切に管理していないと、様々なトラブルが生じることになります。
この点、司法書士や弁護士などの専門家に遺言書の作成のサポートを依頼すれば、遺言書の管理の依頼もできますので、このようなリスクを回避することができます。
5、遺言の内容を確実に実現できるメリット
① 遺言書を作成しても、当然のことながら、遺言者が亡くなった後は遺言者は存在しませんから、「遺言者に代わって遺言の内容を実現する人」が必要になります。
この点、特段の事情のない限り、相続人が遺言の内容を実現するために必要な行為をすることができますが、相続人が遺言の内容に不満な場合、積極的に協力しなかったり、遺言の内容の実現を妨害してくることもあります。
(例えば、預貯金を遺贈した場合、遺言者の死亡後に預貯金の払い戻しをするにあたっては、銀行などの金融機関から「相続人全員が印鑑証明書を提出した上で必要書類に実印で押印すること。」が要求されることがありますが、一部の相続人から拒否されるケースが起きています。
また、土地や建物を遺贈した場合、遺言書の死亡後に土地や建物の名義変更をするにあたっては、法務局から「相続人全員が印鑑証明書を提出した上で必要書類に実印で押印すること。」が要求されますが、一部の相続人から拒否されるケースが日常的に起きています。)
② そこで、法律上、遺言書によって、予め「遺言執行者(遺言の内容を実現するために必要な行為をする人)」を指定することができます。
遺言執行者は、法律上、相続財産を管理しながら遺言の内容を実現するために必要な行為をする権利及び義務を有します。
(なお、遺言執行者は、相続人の同意を得ることなく、遺言の内容を実現するために必要な行為をすることができます。
例えば、「土地や建物の遺贈の場合」や「預貯金の遺贈の場合」などには、「相続人の押印」や「相続人の印鑑証明書」は不要となり、「遺言執行者の押印」と「遺言執行者の印鑑証明書」だけが必要になります。)
③ また、遺言者執行者がいる場合には、相続人は、相続財産を処分したり、遺言の内容の実現を妨げる行為が禁止されます。
(仮に、遺言者執行者がいるにもかかわらず、相続人が、相続財産を処分したり、遺言の内容の実現を妨げる行為をした場合、その相続人の行為は無効になります。)
④ 以上のとおり、遺言書によって、予め遺言執行者を指定しておくと、遺言者が亡くなった後、遺言の内容を確実に実現することができます。
⑤ しかし、遺言の内容を実現するといっても、その内容は複雑で難解な作業も多く、法律上の知識が要求されることが少なくありません。
また、「一部の相続人の相続分を少なくする遺言の場合」や「相続財産の範囲や帰属などで争いがある場合(例えば、「遺言者の所有物であるのか?」について争いがあった場合)」、遺言執行者は相続人と対立することもあります。
つまり、遺言執行者は、遺言の内容を実現するにあたって、「法律上の根拠を示しながら、相続人を説得すること。」を行わなければならない場合もあります。
さらに、遺言執行者は、「訴訟の当事者」として対応することもあります。
「相続財産である現金を相続人に渡す。」などの「単純な作業」であればともかく、一般の人にとっては、遺言執行者になって遺言の内容を実現することは困難である場合が少なくありません。
⑥ この点、司法書士や弁護士などの専門家に遺言書の作成のサポートを依頼すれば、併せて遺言執行者の就任の依頼をすることもできますので、遺言者の亡くなった後、より確実かつ迅速に遺言の内容を実現することができます。
以上のとおり、「遺言の内容が実現されるときには、遺言者は存在しないこと。」を踏まえて、油断することなく、遺言者の亡くなった後、遺言書に関してトラブルが生じることなく、遺言の内容が確実に実現されるように「万全な準備」を生前にしておくことが大切です。
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