遺産承継手続(土地・建物の名義変更などの登記手続)
「遺言」や「遺産分割協議」などによって「遺産分割の内容(「遺産を誰にどのように分けるか?」など)」が確定した場合、遺産を承継させる手続を行う必要があります。
遺産を承継させる手続の中での代表的な手続の一つである「登記手続」に関して、具体的に説明します。
1、土地・建物の名義変更の登記手続
(1)遺言書がない場合
①「遺産分割協議」などによって、遺産である土地や建物について相続する人が確定した場合、原則として、「相続を原因とする所有権移転の登記手続(名義変更の登記手続)」を行う必要があります。
この場合、土地や建物について相続した人は、「単独」で、法務局に「遺産分割書協議書」や「戸籍謄本」などを提出して「名義変更の登記」を申請します。
②「相続人が一人しかいないこと。」によって、遺産である土地や建物について相続する人が確定した場合、原則として、「相続を原因とする所有権移転の登記手続(名義変更の登記手続)」を行う必要があります。
この場合、土地や建物について相続した人は、「単独」で、法務局に「相続人が一人であることが明らかになる書面(戸籍謄本等)」を提出して「名義変更の登記」を申請します。
(2)遺言書がある場合
①「Aに土地や建物を相続させる。」という内容の「遺言書」によって、遺産である土地や建物について相続する人が確定した場合、原則として、「相続を原因とする所有権移転の登記手続(名義変更の登記手続)」を行う必要があります。
この場合、「土地や建物について相続した人」は、「単独」で、法務局に「遺言書」や「戸籍謄本」などを提出して「名義変更の登記」を申請します。
②「Aに土地や建物を遺贈する。」という内容の「遺言書」によって、遺産である土地や建物について承継する人が確定した場合、原則として、「遺贈を原因とする所有権移転の登記手続(名義変更の登記手続)」を行う必要があります。
この場合、「土地や建物について遺贈を受けた人」と「相続人全員又は遺言執行者」が「共同」して、法務局に「遺言書」や「戸籍謄本」などを提出して「名義変更の登記」を申請します。
③ 公正証書遺言以外の遺言の場合、家庭裁判所に遺言書を提出して「検認」を済ませていないと、法務局において「土地や建物の名義変更の登記手続」ができません。
(注)2018年7月6日の民法改正により、法務局が自筆証書遺言書を保管できる制度が設けられることになりました。
なお、法務局に自筆証書遺言書を預けた場合、家庭裁判所での「検認」が不要になります。
ただし、この制度は、2020年7月に実現することになっております。
2、抵当権の抹消登記手続
①「団体信用生命保険」とは、住宅ローンを組んだ人が死亡又は高度障害などになった場合、生命保険会社などが住宅ローンを完済する内容の保険です。
一般に、住宅ローンを組んだ人は「団体信用生命保険」に加入していることが多いといえます。
② 住宅ローンを組んで自宅(土地や建物)を購入した場合、通常、住宅ローンの借入金を担保するために金融機関を権利者とする抵当権が設定された上で、自宅(土地や建物)に抵当権の登記がされています。
③「団体信用生命保険」に加入して住宅ローンを組んだ人が死亡した場合、生命保険会社などが金融機関に住宅ローンを完済します。
この場合、法律上、住宅ローンが完済されたことから、住宅ローンの借入金を担保するために設定されている抵当権は消滅することになります。
従って、「自宅(土地や建物)に登記されていた抵当権」を抹消するための登記手続を行う必要があります。
この「抵当権の抹消登記手続」は、「住宅ローンを組んだ人の相続人」と「金融機関(抵当権者)」が共同して行うことになります。
なお、この場合、金融機関は、通常、「住宅ローンを組んだ人の相続人」が請求すれば、「自宅(土地や建物)に設定されている抵当権の抹消登記を申請するために必要な資料(権利証書・委任状など)」を送付してくれます。
④ 以上のとおり、「団体信用生命保険」に加入して住宅ローンを組んだ人が死亡した場合、「自宅(土地や建物)の名義変更の登記手続」のみならず、「抵当権の抹消登記手続」を行う必要があります。
この場合、「自宅(土地や建物)の名義変更の登記手続」を「先」に行ってから、「抵当権の抹消登記手続」を行う必要があります。
(ただし、この二つの手続は、同時に法務局に申請書等を提出して行うことができます。)
3、換価分割の場合
① 遺産分割の方法はいろいろありますが、その代表的なものの一つに「換価分割(財産を売却して現金を承継する方法)」という方法があります。
② 遺産である土地や建物について「換価分割」をする場合、通常、「相続人の名義にする相続を原因とする所有権移転の登記手続」を行う必要があります。
③「団体信用生命保険」に加入して住宅ローンを組んだ人が死亡した事案において自宅(土地や建物)を「換価分割」する場合、通常、自宅(土地や建物)について、「相続人の名義にする相続を原因とする所有権移転の登記手続」のみならず、「抵当権の抹消登記手続」を行う必要があります。
〒901-3124
沖縄県島尻郡久米島町字仲泊1201番地 202