遺産分割協議が成立しない場合
遺産分割協議が成立しなかった場合、又は、遺産分割協議が成立する見込みがない場合には、家庭裁判所における「遺産分割の調停」や「遺産分割の審判」などによって解決を図ることになります。
1、遺産分割の調停
① 遺産分割協議が成立しなかった場合、又は、遺産分割協議が成立する見込みがない場合には、相続人や包括受遺者(包括遺贈を受けた人)は家庭裁判所に「遺産分割の調停」を申し立てることができます。
②「遺産分割の調停」では、原則として、相続人や包括受遺者の全員が裁判所に集まって、裁判官や調停委員が間に入りながら「話し合い」が進められます。
裁判官や調停委員は、各相続人の意見や希望を聴いたり、遺産の内容を確認しながら、総合的に事情を考慮した上で「解決案」などを提示したりします。
③「遺産分割の調停」は、通常、1ヶ月半に1回ぐらいのペースで期日が開催されます。
④ 事案によっては半年以内に最終的な結論に達することがありますが、平均的には、最終的な結論に達するまで約1年間がかかることになります。
⑤「遺産分割の内容(「遺産を誰にどのように分けるか?」など)」について相続人や包括受遺者の全員の合意が得られない場合、「遺産分割の調停」は不成立となります。
2、遺産分割の審判
①「遺産分割の調停」が不成立となった場合、特段の事情がない限り、「自動的」に「遺産分割の審判」の手続に移行されます。
② 法律上、「遺産分割の調停」が行われることなく、「遺産分割の審判の申立て」を行うことができます。
しかし、実務上は、「遺産分割の審判」の手続が先に行われることはなく、「遺産分割の審判の申立て」を行っても、「遺産分割の調停」が先に行われます。
③ 家庭裁判所は総合的に事情を考慮した上で「遺産分割の内容(「遺産を誰にどのように分けるか?」など)」などについて「審判」を下します。
④ 家庭裁判所は、「特別な事情(相続人全員にとって利益になる事情など)」がある場合、期間を定めて、遺産の全部又は一部について分割を禁止する「審判」を下すことがあります。
⑤ 家庭裁判所が下した「審判の内容」に不服な場合、相続人などは「法定の期間内」に「高等裁判所」に「不服申し立て(即時抗告)」を行うことができ、「審判の内容」を争うことができます。
3、遺産分割協議が成立しない場合に注意すること。
(1)遺産分割協議が成立していない場合でも、相続税の申告などを行う必要があること。
① 法律上、一定額以上の財産を相続した場合、相続人は、「相続の開始があったことを知った日(通常は被相続人の死亡日)の翌日から10か月以内(法定期限)」に税務署に相続税の申告書を提出した上で、相続税を納付しなければなりません。
仮に、相続税の申告書を提出することなく「10か月以内の申告期限」が過ぎた場合、本来支払うべき相続税に加えて、「無申告加算税」または「重加算税」を支払う義務が生じます。
また、相続税を支払うことなく「10か月以内の納付期限」を過ぎてしまうと、本来支払うべき相続税に加えて、「延滞税(利息)」を支払う義務が生じます。
② 相続人は、遺産分割協議が成立していない場合でも、相続税の申告・納付の義務を負担します。
なお、遺産分割協議が成立していない場合、相続税の申告・納付は法定相続分に従って行うことになります。
その後、遺産分割協議が成立した場合、遺産分割協議の結果に応じて、修正申告や更正請求などを行うことになります。
③ 法定期限内に遺産分割協議が成立していない場合、「相続税の優遇・特例措置」が認められなくなることがあります。
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