相続手続きを放置した場合のリスク
相続手続きを放置した場合、下記のとおり、様々なリスクが生じます。
そこで、「相続手続きを放置した場合のリスク」を具体的に説明します。
1、亡くなった人の借金などを背負うリスク
① 人が死亡した場合、配偶者(夫又は妻)・子供・親・祖父母・兄弟姉妹・甥っ子・姪っ子などの相続人は、原則として、死亡した人の預貯金や土地などのプラスの財産のみならず、死亡した人のマイナスの財産、つまり、借金などの負債も承継することになります。
つまり、借金などを抱えている人が死亡した場合、死亡した人の相続人は、「自動的」に「死亡した人の借金の支払義務」などを負担することになります。
② この点、相続人が「相続放棄」の手続を行えば、借金の支払義務を免れることができます。
但し、「相続放棄」をする場合には、「家庭裁判所」に「相続放棄」をする旨の申述を行わなければなりません。
そして、法律上、「相続放棄の申述」は、特段の事情のない限り、「自己のために相続の開始があったことを知った時」から「3ヶ月以内」に行わなければならないことになっています。
従って、自分の両親などの親族が亡くなって相続人になり、その亡くなった人に借金があるにもかかわらず、何もせずに放置し続けていると、「確定的」にその借金を背負うことになる場合があります。
③ 以上のとおり、相続手続きを放置すると、「亡くなった人の借金などを背負うリスク」が生じることになります。
2、通常より多くの「税金」を支払うことになるリスク
① 法律上、一定額を超える財産を相続した場合、相続人は、「相続の開始があったことを知った日(通常は被相続人の死亡日)の翌日から10か月以内」に税務署に相続税の申告書を提出した上で相続税を納付しなければなりません。
仮に、相続税の申告書を提出することなく「10か月以内の申告期限」が過ぎた場合、「本来支払うべき相続税」に加えて、「無申告加算税」または「重加算税」を支払う義務が生じます。
また、相続税を支払うことなく「10か月以内の納付期限」を過ぎてしまうと、「本来支払うべき相続税」に加えて、「延滞税(利息)」を支払う義務が生じます。
さらに、法定期限内に遺産分割協議が成立していない場合、「相続税の優遇・特例措置」が認められなくなることがあります。
② 以上のとおり、相続手続きを放置すると、「通常より多くの「税金」を支払うことになるリスク」が生じることになります。
3、相続する財産が減少してしまうリスク
①「貸したお金を返してもらう権利」「物を売った際の代金を支払ってもらう権利」「過度にお金を支払った場合に返還してもらう権利(過払い金)」などの「相手方からお金を受けとれる権利」は、特段の事情のない限り、権利を行使することなく一定期間が経過すると、「時効」によって消滅することになります。
また、相手方が破産や倒産した場合にも、権利を行使することが困難・不可能になります。、
つまり、「相手方からお金を受けとれる権利」を相続したにもかかわらず、そのまま放置してしまうと、その権利が消滅することになったり、権利を行使することが困難・不可能になってしまうことがあります。
②「株式・投資信託などの財産」は、日々の市場の取引により価格が増減する財産であり、場合によっては、突然、価格が大暴落することもあります。
つまり、「株式・投資信託などの財産」を相続したにもかかわらず、そのまま放置してしまうと、その価値が減少したり、大暴落してしまうことがあります。
そして、相続税を計算する際に基礎となる相続財産の価値は、「被相続人(相続される人)の死亡日の時価」などによって決まります。
従って、相続した「株式・投資信託などの財産」の価値が相続の開始後に暴落した場合、暴落する前の「被相続人の死亡日の時価」などを基礎にして相続税を支払わなければならず、2重の意味で「相続財産の減少(いわゆる「ダブルパンチ」)」になってしまいます。
③「借地権の登記」をする場合、「地主の協力」が必要になったり、また、「登記費用」も発生することになったりして、「労力」と「費用」がかかることになります。
この点、法律上、借地人は、「借地上の建物の登記」をすることによって「借地権の登記」をしなくても、「借地権が自分のものであること。」を誰に対しても主張することができます。
ただし、この場合、「借地上の建物の登記」は、「借地人自身の名義の登記」でなければなりません。
これらの点を踏まえて、借地人は、借地権を守るために、「借地権の登記」をせずに、「借地上の建物の登記(借地人自身の名義の登記)」だけをしているのが通常といえます。
しかし、登記されていない借地権と借地上の建物が相続されたところ、相続人が何もせずに放置した場合、地主が「当該土地の売買」などで交代すると、相続人は新しい地主に「借地権が自分のものであること。」を主張することができなくなる可能性が生じます。
(なお、この場合、相続人は、相続した借地権を守るために、速やかに「借地上の建物の登記(相続人自身の名義の登記)」をする必要があります。)
④ 相続した借金などをそのまま放置した場合、借金などの元金に加えて、日々、利息や損害金が発生することになります。
⑤ 実務上においてよくあるケースですが、相続財産が放置されている間、一部の相続人が勝手に自己の相続分を超えて土地などの相続財産を売却処分などをしてしまって、相続人間でトラブルになるケースがあります。
⑥ 以上のとおり、速やかに「相続財産の調査・確認」をして、適切に「相続財産の管理」をしておかないと、「相続財産が減少してしまうリスク」が生じます。
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