遺言書の調査
法律上、遺言書がある場合、特段の事情のない限り、「遺産分割の内容(遺産を誰にどのようにわけるか?)」などは遺言書の内容に従うことになります。
そのため、相続手続きを開始するにあたっては、まず最初に行うことの一つとして、「遺言書の調査」を行うことが必要になります。
この点、「遺言書の種類」によっては、「遺言書の調査方法」が異なってきます。
そこで、「遺言書の種類」を説明した上で、「遺言書の調査方法」を具体的に説明します。
1、遺言の種類
遺言の種類を大きく分けますと、
①「普通方式による遺言(自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言)」
②「特別方式による遺言(病気や事故などで死が間近に迫っており、遺言者が単独で遺言書を作成することが困難である場合などの特別な事情がある場合にだけ認められる遺言)」
に分けられます。
法律上は、「特別な事情」がない限り、「普通方式」によって遺言をしなければならないとされています。(民法第967条)
この「普通方式による遺言」には、下記のとおり、3つの遺言があります。
(1)自筆証書遺言
自筆証書遺言とは、遺言書の全文を遺言者の自書で作成する方式によって行う遺言です。
いつでも、どこでも、遺言者が単独で文書を作成して遺言できる点に最大の特徴があります。
(注)2018年7月6日の民法改正により、「財産目録(不動産の表示など財産に関する詳細な情報を記載した書面)」については「自書」でなくてもよいことになりました。
ただし、この制度は、2019年1月13日から施工されることになっています。
(2)公正証書遺言
公正証書遺言とは、遺言者が証人の立ち会いのもとに遺言の内容を公証人に口頭で述べて、公証人が遺言者に代わって遺言書を作成する方式によって行う遺言です。
「遺言書の内容」を公共の機関に記録として残せる点に最大の特徴があります。
(3)秘密証書遺言
秘密証書遺言とは、遺言者が遺言書を作成した後、遺言書を封筒に入れて封印することによって遺言書の内容を秘密にしながら公証人に提出して、遺言書が存在することを公証人に記録してもらう方式によって行う遺言です。
「遺言書の内容」を秘密にすることができる上で、「遺言書の存在」を公共の機関に記録として残せる点に最大の特徴があります。
(注)秘密証書遺言の場合、「遺言書の内容」を秘密にしながら「遺言書の存在」を公的に記録することが目的であることから、公証役場に遺言書が入った「封筒の控え」だけが保管されて、「遺言書の原本」は遺言者が持ち帰って管理することになります。
2、被相続人の自宅などにおける調査
(1)「被相続人の自宅」や「被相続人が借りていた貸金庫」などで「被相続人が作成した遺言書の有無」を調査します。
この「被相続人の自宅などにおける調査」の際、とくに注意すべきことは、以下の2点です。
① 遺言書は、法定の条件を満たしている限り、「メモ帳」や「新聞の折り込み広告紙」などを使って作成した場合でも有効になること。
② 法律上、相続人が遺言書を破棄した場合、原則として、相続する権利が剥奪されること。(相続人の欠格)
従って、「被相続人が生前に遺産の承継割合などを書いていた書面」を発見した場合、その書面が「メモ帳」や「新聞の折り込み広告紙」などであっても、遺言書として有効になる可能性がありますので、大切に保管することが必要になります。
(2)被相続人の遺品の中に、「司法書士や弁護士などの専門家の名刺や封筒」などを発見した場合、その専門家が被相続人の遺言書を保管している可能性がありますので、その専門家に照会することが必要になります。
(3)以上の「被相続人の自宅などにおける調査」によって、「遺言書の有無」をある程度は確認できます。
ただし、これらの資料の有無の調査だけでは、遺言書が紛失や廃棄や隠匿されている可能性があることなどから、「遺言書の有無」を完全には確認できません。
そこで、事案によっては、「遺言書の有無」について「補充調査」を行う必要があります。
3、公証役場での調査
① 平成元年以降に公正証書遺言又は秘密証書遺言が作成されている場合、日本公証人連合会において「遺言書が作成された公証役場」「遺言書を作成した公証人」「遺言者」「遺言書の作成年月日」などの情報がコンピューターによって管理されています。
この点、公証役場を窓口として、同連合会に対して「遺言書が作成された公証役場」「遺言書を作成した公証人」「遺言者」「遺言書の作成年月日」などの情報について照会をすることができます。
なお、この照会は、全国にあるどこの公証役場でも行うことができます。
②「公正証書の原本」は、「公正証書を作成した公証役場」において保管されています。
これにより、公正証書遺言の場合、「公正証書を作成した公証役場」に対して「公正証書遺言書の謄本」の交付請求ができます。
4、遺言書を発見した場合に注意すること。
(1)検認を行うこと。
① 法律上、遺言書の保管者又はこれを発見した相続人は、遺言者の死亡を知った後、遅滞なく遺言書を家庭裁判所に提出して、その「検認」を請求しなければならないことになっています。
② 法律上、遅滞なく家庭裁判所に「検認」の請求を行わなかったり、或は、「検認」を経ずに遺言の内容を実現した場合、「過料の制裁」が科されることがあります。
③ 公正証書遺言の場合には、「検認」は不要であり、「検認」を行うことなく遺言の内容を実現することができます。
※「検認」の詳細については「検認」のページを参照してください。
(2)開封してはいけないこと。
① 法律上、封印がなされている遺言書は、家庭裁判所において相続人などの立ち合いのもとでなければ開封できないことになっております。
② 封印のある遺言書を家庭裁判所以外で開封した場合、「過料の制裁」が科されることがあります。
5、自筆証書遺言書の保管に関する民法改正
2018年7月6日の民法改正により、法務局が自筆証書遺言書を保管できる制度が設けられることになりました。
なお、法務局に自筆証書遺言書を預けた場合、家庭裁判所での「検認」が不要になります。
ただし、この制度は、2020年7月に実現することになっております。
〒901-3124
沖縄県島尻郡久米島町字仲泊1201番地 202